322L コラム&エッセイ(11)「果報だんご」



今日は、10月9日。

私の母親が生まれた日。

関東大震災の年に生まれたので、

生きていれば、103歳。

このくらいの歳で存命の方は、日本中にいる。

生きていても、不思議はない。

でも、私の母は、69歳で亡くなった。


思い出はたくさんあるけど、

母を偲んで、エッセイの作品を載せることにした。

昭和30年代の田舎町の暮らしを描いているので、

白黒映画の世界と思って、

読んでいただければ、嬉しいです。


⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️


                 果報だんご


  「さぁ、できたよ。」

白い割烹着姿の母の顔が湯気で揺れている。鍋をのぞ

くと、小豆汁の中におだんごが浮いていた。

「かほだんごだから、気をつけて食べらいネ。」

母はにこにこして、子どもたちに言った。

   当時、刈り上げにパーマヘアの私は小一、いがぐ

り頭の兄は中一、坊っちゃん刈りの弟は幼稚園の年少

で、両親と祖父母がいる七人家族。

まるで、サザエさん一家だ。

   長四角のテーブルに着くや、子どもたちは、お目当

ての、かほだんごに飛び付いた。おだんごを噛むと、

カチッ。歯に当たるものがある。

出てきたのは、1センチほどの串切れ。

「あった!当たったよ!」

私は、そう叫ぶと、和紙の上にそっと置いた。

   向かい側では、百円札の板垣退助のような鬚を生や

した祖父と、髪を結い上げた着物姿の祖母は、南瓜の

煮物をふぐほぐ食べている。

右側では、ワイシャツ姿の父が、だんごより酒に夢中

で、顔が少し赤らんでいる。

左側の席には、お釜や鍋と並ぶようにして母がいた。

「かほだんご、お代わり!」

子どもたちは競争のようにして、二杯目も平らげた。

串を数えてみたら、私の分は、6本あった。

「お仏さんサ、上げてございや。」

と、母の声。和紙で包んで、仏壇に供えた。手を合わ

せると、兄が真面目な顔をして、私に言った。

「寝てる間に、奇跡が起こるゾ。」

翌朝、早起きして、仏壇へ行ってみると、

あの串切れが、十円玉6個に姿を代えていた。


                        1995年(平成7年)11月       

                                                     ころりん   45歳


⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

❮講評❯

仲間のKさんの作品のパロディですか?(笑)パロディの方がオリジナルより上手というのは、よくあることですが。ただし──、場面描写は完璧ですが、オチがわからない。茎って、何のクキ?また、茎が入っていると、どういう意味があるのか、説明を。

刈り上げにパーマヘアって、こんなスタイルですか?

もう1つくらい、ヒゲ関係の字がありますよね。


⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️


この作品を書くにあたって、

どんな課題が出されたのかしら?

家族とか、料理とか?ううん、思い出せない。


講評にもあった「茎」という言葉が、

誤解を招きやすいと反省し、

今回は、「串」という言葉に書き直してみた。

実際、串を短く切って使ったのだと思う。

私が串という言葉が浮かばなくて、

誤用で茎という言葉を使ったようなの。

まあ、串でも、意味がわからないか?


言ってみれば、その料理は、お汁粉のようなもので、

丸いおだんごが入っていて、

その中のどれかに、串入りのものがある。

串があると、当たり。

そして、当たりくじの串が、お金に変わる。

なので、果報=良いお知らせ。

こういう習わし、今もあるのかしら?

もう、誰も継承してないでしょうね。

うちの地方だけの習わしかしら?

他の地方にも、そんな習わしがあるかしら?

珍しい風習だから、

講師には、ちんぷんかんぷんなのも、当然。

果報だんごは、

子どもを喜ばすための行事だったのかも?

昔は、なんの娯楽もなかったから、

退屈な日常に、ちょっとした変化があるだけでも、

どきどき、わくわくする。


先生は、

私の子供の時の髪型も、よくわからないようね。

イラストで描いてあるのは、モヒカン狩り!😮

いやだぁ~、そんなんじゃない。

サザエさんちのワカメちゃんの髪型よ。

前から見ると、おかっぱ頭だけど、

後ろのうなじ付近は、刈り上げてるの。

で、私の場合は、

耳の辺りの髪にパーマをかけてる。

想像できるかしら?


ヒゲの漢字の指摘があったので、

調べてみたら、漢字の使い方が間違っていたので、

今回は、訂正。

元の原稿の「髭」は、口ひげ。

もう1つの漢字の「鬚」は、あごひげ。

で、私のお爺さんは、

板垣退助のような、長い長いあごひげだったから、

ひげの漢字も書き直し。

お爺さん自身、

百円札の板垣退助を意識して、鬚の手入れしてたよ。


⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️


今日は、母の誕生日。

この作品では、白い割烹着姿と書いてあるけど、

昭和30年代の前半は、確かにそうだった。

後半になると、エプロン姿だったような?🙄

この作品の頃、私の家は、前沢町にあって、

                                   (今は、前沢牛で有名)

小4の頃、引っ越して、隣り町の水沢市へ。

          (その後、統合して、どちらも奥州市となった)

昭和30年代の真ん中は、1960年。

この頃から、日本が高度経済成長して、

活気のある世の中になっていったのね。

洗濯機やテレビ、オートバイ、車が普及し、

スーパーマーケットも、登場。

生活が変わるにつれ、女の人の服装にも変化が。

母は、割烹着からエプロン姿に変わっていた。


エッセイは、そうなる前の世の中で、

いわゆる「終戦後」を引きずっていた時代の話。

だから、

子どもたちのおもちゃも普及していない。

私が子供の頃は、身の回りの不要品を利用して、 

自分で遊び道具を作っていたわ。


敗戦によって、日本全体が貧しかったけど、

でも、家族みんなで食卓を囲む団らんがあった。

昔からの良い風習や文化が受け継がれ、

小さな幸せを味わうことができた。


でも、母は、どうだったのだろう?

お釜の隣に座り、

家族が、お代わりの茶碗を出す度に、

せっせっと、よそって、食べる暇もなかっただろう。

舅、姑の顔色をうかがってか、口数が少なかった。

昔のお嫁さんて、気苦労が多かったと思うわ。

でも、引っ越しする時に、

舅、姑は、同じ町内にある、父の姉の家に残った。


そしたら、どうだろう?

母は、父の商売を手伝い、

お客様相手に、楽しそうに会話する。

笑い声が絶えず、とても社交的。

これが、本当のお母さん。


戦争で左足を失い、義足を履いて働く父の、

その左足の代わりとなって、支え続けた母。

夜になって、父が義足を外し、

擦れた足先にヨーチンを塗る、その傍らで、

母は、縫い物をしていた。

父の、短くなったその足先につける、

靴下のような形の袋を、手作りしていたの。


母は、裁縫が得意で、

ミシンでも、よく縫い物をしていたわ。

それは、新しい生地ではなく、

私の中学の制服のスカートを縫い直して、

自分のタイトスカートを作っていたわ。


子どもたちには、不自由のない暮らしをさせてくれ、

おもちゃや学用品、服も何でも豊富に与えてくれた。

父のスーツは、とても立派なものだった。


でも、母自身は、贅沢をしなかった。

シンプルな服に、いつも、エプロン姿。

指先には、真鍮の指ぬき。



裁縫をしない時でも、指ぬきは外さなかった。

失くしやすいものだから、つけている。

いつでも、さっと、裁縫ができて便利。


と、思っていた。

でもね、改めて思うの。

あの指ぬきは、

もしかしたら、指輪の代わりだったんじゃないか?

父からは、何のプレゼントももらったことがない。

どんな指輪も、もらったことがなかった。


世の中は、どうだったろう?

昭和の30年代後半から40年代へかけて、

景気が良くなるにつれ、

女の人たちの服装も華やかになって行ったし、

指先を見れば、宝石を身につける人もいた。


母は、そんな周りの人たちを見て、

何か、感じたりしたのだろうか?

お化粧もおしゃれもせず、

あれが欲しい、これが欲しいとも言わず、

ただ、ひたすら、真面目に一日一日を生きている。


私は、思うの。

父の、母への感謝が足りなかったような気がする。

自分のために尽くしてくれる、身近な存在を、

当たり前、当然と思っていないか?

ねぎらいの意味で、

何か小さな物でも、プレゼントして欲しかった。




母の万年指ぬきは、

もしかしたら、結婚指輪の代わりだったのかも?

父のために裁縫する、献身的な姿の象徴。

私には、そう思えてならない。


そんな夫婦だったけど、晩年は、

一緒に、あちこち旅行したようで、

思い出のアルバムを開くと、

嬉しそうに目を輝かせている母の姿がある。

やっと、これで、母も報われたに違いない。

もう、その頃には、母の指ぬきは消えていた。


                               by      ころりん


✳️関連記事は、こちらから。

                            ⬇️

274L コラム&エッセイ(10)「通販マニア」



✳️私のプロフィール&過去記事一覧(画像付き)へ。

                       ⬇️
にほんブログ村 PVアクセスランキング にほんブログ村







コメント

全期間人気記事ランキングtop10

1A はじめまして

58E 大腸カメラで大腸がん&急性虫垂炎の経過観察

37L コラム&エッセイ(4)「ステイ・ホーム」

7D 歌って元気になろう~ ヤマハのウェルネスプログラム

2B 私のふるさと&大谷翔平

19A 再びブロガーになった76歳の深い訳

15K ものを運べない私…室内家具はキャスター付き

8E 4本足の私

70F 団塊の世代にオススメの雑誌

208D 腰かけタップダンス:しばらくお休みします