268L コラム&エッセイ(7)「死因」
昔、エッセイ教室に通っていた私。 先生からのアドバイスに従って、 今回、書き直してみました。 いろいろ想像しながら読んでみて下さい。 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 死因 マンション暮らしの今となっては、妙に懐 かしいのだか、十数年前に借りた家は、台 風シーズンになるとよく雨漏りがした。日 当たりも悪く、カビでも生えそうな古い木 造の二階建て。新婚さん用の離れといった 感じで、一階がリビングとキッチン、二階 が寝室とウォークインクローゼット、浴 室という間取り。そんなマイホームに、い つの頃からか勝手に上がり込んで来たアイ ツとの同居生活が始まった。 私が一階でテレビを見ていると、ヤツは天 井を右から左へと物凄い勢いでダッシュす る。私が二階のベッドで休んでいると、階 下でガリガリと耳障りな音を立てるのだ。 追い出そうにも、ヤツの姿は見えない。 珍しく静かで平穏に過ぎた日の夜、お風 呂のお湯を沸かそうとして、うっかり居眠 りしてしまった。グラグラに煮えたぎって いる浴槽に慌てて水を足すが、手も入れら れないほどの熱さだ。私は湯桶でお湯をす くい、バシャバシャじゃんじゃん回りに捨 てていった。 ようやく入れる温度になって、湯船に使 った時だった。悲鳴のような声がしたかと 思うと、浴槽の下からピューと飛び出し、 走り去るものがあるではないか。一瞬の出 来事に我が目を疑ったが、それは、真っ赤 になるほど、びしょ濡れになったネズミで あった。 歓迎されざる同居人の運命は、まもなく力 尽きて、あっけない最期を迎えた。死因 は、紛れもなく、熱湯の雨に打たれたこと によるショック死であった。 1994年(平成6年)12月 ...